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中学校の特殊学級の様子 担任から   辻 裕二

    学校の様子

    学区の学校に特殊学級(勤務校での名称は学習室)が設置されているため生徒は地域の学校に通うことができます。まず、入学、始業前に生徒、保護者と話し合いを行い教育課程、交流等についてニーズを確認します。この話し合いの下、1学期からの行動観察等で個別教育計画の作成を始めます。個別教育計画は【障害特性(情報処理の特性を中心に)・社会性・運動(微細・粗大)・コミュニケーション・家事スキル、手伝い、余暇、生活資源(地域)の利用】【教科指導の手だて】の内容で、家庭生活、地域生活での課題や将来に向けての課題などを踏まえたうえでの教育内容を設定しています。新学期が始まると、必要に応じて、交流級の生徒に、学習室の生徒の特性を伝え、どのようにかかわってほしいかについて授業で話します。生徒一人ひとりの持つ個性が尊重されることと同じように障害のある生徒の特性も尊重されるべきであることを伝えます。そのような授業を行うことで、障害のある生徒が「できないこと・苦手なこと」を他の生徒から強制される事態を防いだり、生徒同士の交流でのストレス状態を回避します。また、職員会議では教職員の「障害の理解」を促すために、毎回シリーズで資料の提示を行い、時間を設定してもらっています。在籍している生徒の報告だけでなく、自閉症・ADHD・LD等の特性について、事例を上げ、理解しやすいものを心がけています。学校生活で生徒が困っていること、苦手なこと、つまづいていることを伝えることで、障害特性を考慮した対応をしてもらえるように話しています。
     本年度かかわっている通常級在籍のアスペルガー症候群の生徒がおり、個別指導(生徒の実態により別室登校)が行われています。生徒は個別対応により不登校から立ち直り登校しています。その生徒のための教育課程を組み、市の学校支援事業(予算化されている)によりアスペルガー症候群に理解のあるボランティアにも加わってもらっています。



    障害児教育に携わって

    将来を見据えた教育を行うために必要なことは、生徒の「障害特性の理解」が不可欠です。そのために必要なことは正確な評価とその評価を教育活動にいかに反映させるかでしょう。フォーマルな評価はなかなかむずかしいのですが、毎日の行動観察で得られる情報の多さは、専門家の中では一番恵まれている状況といえるでしょう。「できる」「できない」「できそう」は教育活動に多くのヒントを与えてくれます。特に情報処理の特性を知ることは「何を」「どのように」教えていくのかを導き出してくれます。
    教育活動の目標は「自立」が大きな柱だと思いますが、一人でできることは自立心を育て、自尊心を高めてくれます。結果だけでなく、その過程から自尊心を高められるように、自立課題は非常に大切だと思います。また、自立は何でも一人でできることだけをめざすものではありません。将来に向けて、いかに上手に「支援」を得て地域で生きていくかも、とても大切なことだと考えています。そのために必要なスキルは数多くあり、学習活動を組み立てるときの大きな要素となっています。「課題分析」を行い、スモールステップで丁寧に学習活動を支援していくことが大切だと思います。 「教育」「療育」のベースの上に成り立つものです。ところが「療育」を知らず「教育」のみを行い「教育にのらない生徒」を生み出している現状を残念に思います。「学習」の前に生活の組織化(オーガナイズ)をしていかないと「効果的な教育活動」はできません。そのために必要な知識は「教育」以外の情報を取り入れることです。外部機関との連携はむずかしいのですが、今後特殊教育で専門性を求められるとき必要なことは、学校以外から人的、知的支援をどれだけ多く得られるかだと思います。また、教師自身が理論だけでなく、実践的なトレーニングを受けることの必要性も強く感じています。
    「教育」の枠のなかでいくらがんばっても限界あります。この状況は教員ばかりでなく、障害児本人、家庭に於いても、決してよい状況ではありません。学校生活に順応しても、将来の社会生活・職業生活・家庭生活に意味のあるものにならなければ、何のための学校教育なのでしょうか。障害児・者を取り巻く社会情勢も大きく変わろうとしています。「将来」を見据えた教育の実践はこのような社会情勢にも敏感に反応し、教育の現状を見直すべきでしょう。

2003年版





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