目次へ戻る
済美養護の挑戦、障害児医療における病院連携の確立  
  杉並区立済美養護学校 保護者・江副 新

急に子どもの様子がおかしくなったり発作を起こしたとき、大きな怪我をしたとき、皆さんは何時でも受け付けてくれる医療機関を把握していますか?
 国立保健医療科学院による救急医療調査でわかったことですが、救急病院のうち子供の急患を診るのは53,7%。小児科を掲げる救急病院ですら80%にとどまっており、ましてや障害児、特にコミュニケーションのとりにくい自閉症となると、その受け入れはかなりの困難が予想されます。いざという時、どこの病院に行けばいいのか、親の不安ははかりしれません。そんな保護者の声をうけて、杉並区立済美養護学校では、近隣の佼成病院と医療提携を結び、緊急時の障害児医療を確保しました。 済美養護は、都内でも珍しい区立の養護学校で、小学部・中学部に訪問学級を併せた小規模校ですが。知的障害だけでなく、肢体不自由や重度重複の子供たちもいて、医療問題は大変重要な課題でした。そこで、長年の懸案だった緊急医療のためにPTAが立ち上がり、学校側と協議して最も近い救急指定の総合病院である佼成病院に相談をもちかけ、快諾を得ることが出来ました。そして、家庭・学校・主治医・病院を結ぶ医療連携が、わずか半年を待たずに確立されたのです。

済美養護の病院連携はこんな仕組みです
 まず、家庭と主治医の協力により、毎年詳細な障害状況プロフィールと医療情報を得ます。具体的には、保健室から家庭へ「保健調査票」と「発作記録用紙」が配布され、緊急時の搬送先を確認します(現在は全員が佼成病院を指定)。さらに、担任の先生と共に「主治医同行訪問」を実施し、投薬・発作への処置・学校行事に対する配慮も含めた「主治医意見書」をお願いします。教諭達もこの場で医師から具体的指導を受け、医療への知識を深めることができます。こうしてつくられた全在校生の最新カルテが、毎年新学期に病院に届けられます。

 病院では、これを『済美養護専用カルテボックス』に保管。救急の必要が発生した場合、名前を告げると、受付コンピュータで済美養護の障害児であることと『特別カルテ』の存在がヒットします。この結果、障害や特徴、病歴、最新の検査結果、投薬状況などを担当医師がすぐに確認出来て、それによって病院でのスムーズな受け入れと、適切な検査・治療・手術が可能になりました。(もちろん、普段通院していなくても、また、家庭からの依頼でもOKです)
 この病院連携がスタートして以来、既に十数件の緊急搬送がありました。てんかん発作の他に、家で頭部に大ケガをして近くの外科でCT検査を断られたものの佼成病院できちっと対応していただけた小学生、虫垂炎から重い腹膜炎を併発していて危険な状態にあった中学生など、保護者からも多大な感謝の言葉がありました。佼成病院の英断と各主治医達の積極的な協力がなければ実現しなかった成果ですが、我々も「やればできる!」ということを思い知らされたプロジェクトでした。
 このようなかたちでの医療連携は、全国でもまだ珍しいものですが、親や現場のニーズを直接的に反映できたという意味で、今後の展開が期待されます。そして、これを卒後の世界にまで広げていくことが、私たちの次なる希望です。地域で障害者が生きていく為に、医療は、最も重要なリソースのひとつだということは確かな事実ですから。

2003年版

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Copyright (C) 2001-2004 ガイドブック作成委員会 All rights reserved.