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地域生活の工夫


「りょうちゃんからのお手紙」  地域に理解を求める工夫の例

「りょうちゃんからのおてがみ」は、近所の方、交番、家の近くの小学校、コンビニ、本屋さんパン屋さんなどに、りょうちゃんの存在を知ってもらうこと、地域での生活に理解と協力を求めトラブルがあったとき責任の所在がわかるように、実際は、顔写真と連絡先の書いたものを配布しています。 「おてがみ」の裏には、それぞれの配布先に合わせた説明文をつけました。
 今回は「コンビニ&お店バージョン」を紹介します。 「おてがみ」を配布した原因に、ひとりでお金も持たずにふらっとコンビニに行って迷惑をかけたことがあります。 地域生活では、いろいろなトラブルが起こりますが、トラブルは知り合う「きっかけ」だと考えましょう。 当たり前に地域で暮らせるように、トラブルがなくても知り合う「きっかけ」がみつかるといいですね。

〜りょうちゃんからのおてがみ〜

ぼくのなまえは ○△□りょうすけ です。
 □△小学校の4年生です。 ぼくは生まれつき脳に障害があって お話しすること、字をよんだり書いたりすることが苦手です。 苦手なことは 他にもたくさんあって 「危ないこと」 や、 「人の気持ち」 や、 「きれいと汚い」 など 目に見えないことがよくわかりません。 顔や体にさわられることや大声で 話しかけられることも苦手です。 「人の気持ち」 がわからなくて、ブランコに 乗りたいと他の人のブランコを取って、しかられることもあります。

 ぼくの家は、玄関に行くドアに中からかぎがついています。 ふつうは外から 入らないようにかぎをするのだけど、ぼくのうちは、ぼくが勝手に外に行かない ように、中からかぎをかけるのです。 お母さんは、ぼくが外に行くと他の人に 迷惑をかけたり、危ないことが多いので、 「出かけないで。」 と言ったり、ぼくが 出かけるときはついてきて、いちいち注意したりします。

 ぼくは絵を描くことや、ゲームも好きだけど、一日中、家にいるのは退屈だし お母さんがうるさくて困っています。 僕は自転車で走ること、公園で遊ぶこと プールで泳ぐこと、ディズニ−ランドに行くこと、飛行機で旅行することが好き です。 「中央線」の電車がぼくのラッキーアイテムで、いつも持っています。 遊ぶことが 好きで、勉強がにがて。 これはみんなと同じかもね。

 ぼくが危ないこととか、迷惑なことをしていたら、注意をしてください。
 注意をしてもわからないようだったら、お母さんに電話してください。
 ぼくがひとりで困っているときは、お手伝いしてくれるとうれしいです。
 とってもふしぎなぼくだけど、どうぞよろしくお願いします。

    連絡先  XXX−XXXX-XXXX
    ママの携帯 XXX-XXXXX−XXXX  (○△□)

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りょうちゃんのおかあさんから お店の方への手紙  (「りょうちゃんのおてがみ」 の裏に書かれています)

お店の方へ

  私は近所に住む子どもたちにりょうちゃんのことを聞かれます。 「どうして、話せないの?」 「大きくなったら治るの?」 りょうちゃんを追いかけながらでは、質問にうまく答えられません。 どうすればりょうちゃんのことを伝えられるかな?と考え、りょうちゃんの気持ちになって 『りょうちゃんからのおてがみ』 を書きました。
  地域で生活するためには、りょうちゃんは街のルールに慣れなければいけないし、街の人たちにもりょうちゃんに慣れて欲しい。 当たり前に、悪いことをしたら叱ってほしいし、自分でがんばろうとしていたら、見守っていただけると嬉しいです。 いくら注意しても意地になって泣く日もあるし、素直に従える日もあります。 普通の子と同じように進んだり戻ったりの繰り返しです。 障害のせいでわからないとか、どうせ出来ないとあきらめないで、根気よくいろいろなことを教えていこうと思っています。
  普通の子どもよりも、はるかに時間も手間もかかりますが、りょうちゃんはお買い物が大好きなので、なるべくひとりで出来るように練習させたいと思っています。 お店の方にもご協力をお願いしたいと思って、こちらの手紙をお渡しすることにしました。
  お手数で申し訳ありませんが、ご理解、ご協力、どうぞよろしくお願いいたします。

  • かごに欲しいものを入れて、レジに持って行くことが出来ます。

  • レジに品物を持って来たら「お財布は?」と聞いてください。 お財布を出さなかったら 「お金がないと買えない。」 と帰してください。 泣くかもしれませんが、お金の必要性を理解させるためなので、よろしくお願いいたします。

  • 支払いですが、お金の種類をまだ理解していないので「100円、5枚」とか具体的に指示して頂ければ助かります。 忘れやすいので、お釣りを渡してから品物を渡して下さい。

  • お金の出し入れに少し時間がかかります。 他のお客様がお急ぎのときなどは  「順番。 待ってて。」 と声をかけて、後にして頂いて結構です。

  • 金額が足りないときは、お金の範囲の品物だけ渡して 「お金が足りないからこれは買えない。」 と断ってください。 今は理解していませんが、お金の種類や買える品物を、少しずつ覚えられると思います。

  • ご迷惑をおかけするようでしたら、お電話ください。

      電話 ***−**−****  携帯 ***−****−****  名前 ***


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「りょうちゃんからのおてがみ」を読んで、一般の人たちはどんな感想を持つのでしょうか?
 物語のように、この文章でお互いの理解が深まって、なにもかもうまくいくわけではありません。
 世間一般の人たちは、 「障害」 という言葉に警戒心やアレルギ−を持つことも多いのです。
  「おてがみ」 は単なる 「きっかけ」 です。 生活の中でりょうちゃんの個性に慣れてもらい、理解されることが大事だと思っています。 トラブルの後もコンビニに通い 「りょうちゃん、今日は何を買うの?」 と声をかけられて、知らない人に名前を呼ばれて少し驚いたけど、はにかむ笑顔を見て、地域に受け入れてもらえることが大事なのだと思いました。
 「りょうちゃんからのおてがみ」 は、立教大学コミュ二ティ福祉学部 (赤塚光子教授) のゼミで 「地域生活支援ガイドブック 2001」 と共に教材として紹介され、父親でもある岡部耕典 (都立大学社会福祉学科博士課程) が 「障害児の親と地域生活支援について」 お話をしました。

   また、成蹊大学 (牟田悦子教授) では 「おてがみ」 を資料に、 「障害児のお母さんの話を聞く」 授業が行なわれ、岡部知美が 「りょうちゃんについて」 お話をしました。 授業の後、提出された感想文を紹介します。 少しずつ、ひとりでも多くの理解者を増やしていきたいと思います。

現代社会研究の基礎E 「岡部知美さんのお話を聞いて」     大平真知子

 今まで、障害のことについて自分なりの知識や認識はしてきたつもりでしたが、今回、実際にお話を聞くことができて、今までのなんとなく遠い存在で、結局、第三者的な考えしか持てなかったのが、少し近い存在に変わり、障害というものについて、また違った見方を得る事ができました。 「障害はその子の生まれ持った個性である」 まったくその通りだと思いました。 そして、そんな風に思えるのは岡部さんがりょうちゃんのことを本当に愛しているからだし、それは母親が子どもに対して持つ何の変哲もない、当たり前の感情だと言う事です。 私達は障害を持つ子どもをお持ちの方に 「大変なのにえらいですね。」 とか、 「よくがんばってますね。」 とか言って、気付かないうちに自分達と壁を作っているけど、子育てなんてみんな大変なことだし、自分の子どもが困っていれば手助けするし、子どもにとって普段の生活が安心したものになるのならば、

それは親として当然の行為だと思いました。 障害の存在とは、障害そのものによって規定されるのではなく、周りの環境によって規定されてしまうものだと思います。 だから、周りの人の理解やあり方はとても大切なことであると再認識しました。 まずは、ほんの上辺だけでもいいから知ってもらう。 そして慣れてもらう。 とてもゆっくりだけど、決して早足じゃないけど、周りの子に抜かれたって、りょうちゃんは一歩一歩、前に進んでいる。 そんな姿が周りの人に小さな感動や笑顔を与えてくれる。 私たちが出来る事は、暖かく見守ること、手を差し伸べること、余計なお世話はしないこと。 そう思ったら、今まで堅苦しく考えすぎていたようで、なんだか肩の荷が少し軽くなった気がしました。 これからも子育て大変だと思いますが、たくさん笑って、お洒落して、毎日を送れるといいですね。 今回、お話を聞くことができて本当に良かったです。 どうもありがとうございました。


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